対話から生まれるものづくり|陶芸家 中園晋作
顔が見える関係性をつくりたい。そんな思いからうつわのセレクトショップ「mor」は始まりました。
「人、もの、文化をつなぐ場をつくりたい」という根本にある思いは変わらないものの、伝え手として活動する中で、今後の道筋に迷うような時期もありました。
そんな中、出会ったのが陶芸家の中園晋作さんです。
中園晋作さんは、2007年に陶芸家として活動を始め、2009年に栃木県芳賀郡益子町へ移住。2022年にはうつわブランド「palette pottery」を立ち上げ、個人作家の枠にとらわれず、試行錯誤しながら取り組まれています。
中園さんとの出会いは、2024年の春頃。それ以来、つくり手、伝え手それぞれの視点から、うつわに対する思いを対話し続けてきました。
時代に合わせて試行錯誤しながら、今もなお変化し続ける中園さん。今回は、うつわづくりへの思い、ブランドを立ち上げた背景、本企画に込めた思いなどをお伺いしました。
「作家」と「伝え手」、それぞれの視点で

中園さんとの出会いは2024年の春頃ですよね。実は以前、益子陶器市で中園さんの個展にも立ち寄ったこともあったので、ご連絡が来た時にはすごく驚きました。
出会った時期は自分もちょうど、うつわブランド「palette pottery」を始めたばかりだったので、うつわづくり以外の活動にも興味が広がった頃でしたね。
その時にとみこさんの発信に辿り着いたんですが、最初はもっと「ビジネスの人」だと思っていたんです。うつわ業界を戦略的に選んで活動されているのかなと。でも、その動き方自体に興味があったので、一度お話してみたいなと思ってご連絡しました。
そうだったんですね。私も当時は個人で買い付けや販売を始めたばかりで、今後の活動方針も手探りな時期だったので、そのタイミングで中園さんと出会えたことは幸運でした。
僕自身の感覚からすると、文章を書くのってかなり労力がかかる仕事なんですよ。だから、あれだけ発信されているのは相当考え抜いてやっているのかなと思っていたんですが、実際にお会いしてみるともっと自然体で。
「仕事としてこれを選んだ」というよりも、「純粋に興味があるからやっている」という熱量が伝わってきて、最初の印象が良い意味で変わりました。
当時、中園さんが見てくださっていたnoteやPodcastなどは、ライフワークとしてその時々の思考をそのまま発信していただけなんです。
これまでは、「作家」と「お店」という立ち位置が一般的でしたが、うつわが好きでその熱量を発信していく…最近ではそういう新しい立ち位置の方もいらっしゃるんだなと新鮮でしたね。

ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。最初にお会いした時も、ビジネスというよりも同志のような感覚で、うつわに対するあり方や、今後の構想について色々お話ししましたよね。
そうですね。「作家」と「伝え手」というお互いの立場から業務的に入るのではなく、「一緒に面白いことをやりたいね」という思いから始まりましたよね。
そこからは双方の企みを共有しあうようにもなって。「mor」のコンセプトや、作家さん一人ひとりとの関係値の紡ぎ方は、中園さんの影響も大きいので、今回改めてご一緒できて嬉しいです。
そう言ってもらえると嬉しいです。自分も、人からの影響を結構受けるタイプなんですよ。だから、こうして一歩踏み込んでくれる方々との対話から得たものを、ものづくりにも反映したいと思っていたんです。
陶芸家への道のり

中園さんは20年近く陶芸の活動をされていますが、この道を志したきっかけを改めてお伺いできればと思います。
もともと美術が好きで、教職を取るために美大に進学しました。絵画、ガラス、染色…さまざまなコースがあったんですが、その中で「ろくろが面白そうだな」という理由だけで陶芸を選んだんです。
その時点ではうつわにそこまで興味があったわけではなくて、卒業するまで「陶芸を仕事にしよう」という強い思いもなかったんです。自分の中で陶芸家は、アーティストのようなイメージではなく、窯元に就職して同じ作業を繰り返しながら量産していくイメージだったので。
そんな中、先輩と川崎で家を借りて陶芸をし始めた頃に、個人作家の存在を知ったんです。個人作家として活動する陶芸家の知り合いもおらず、実態は全く分からなかったんですが。東京で個展ができたら、いつか仕事につながるかもしれないと考え始めました。

最近では個人で活動されている陶芸家の方も多いですが、当時はあまりいらっしゃらなかったんですか?
当時から陶器市もありましたし、自分が知らなかっただけで存在はしていたと思います。今ほどインターネットで情報が出回る時代ではなかったので、知るきっかけは限られていましたね。
大学卒業後、少しずつお店にうつわを卸すようになり、取引先のお店の方が益子の方の作品を扱っていて、仕入れに連れて行ってくれたんです。益子に初めて来て、工房を見学したり環境を知ったりして、「ここで挑戦してみたい」と思うようになりました。

益子に惹かれた理由は、個人で活動する陶芸家の方が多く、それが当たり前に受け入れられているという点や、陶芸をする上で土の質がいい点など、環境面だったのでしょうか。
もっと現実的な理由もありますね。家に陶芸に使用する電気窯を置くとなると、庭付きの場所じゃないと難しくて。そうなると、そこそこ家賃もかかってしまって…そんな中、益子で居候できる家が見つかったんですよ。放置された別荘だったんですが、そこを直したらいい条件で住めるとのことで、思い切って移住を決めました。
それが大きなきっかけだったんですね。
他にも、益子陶器市があったり、東京からもそこまで遠くはなかったり、陶芸家として出店できる機会が多そうだったのも決め手でした。
誰かのもとに弟子入りすることも考えたんですが、師匠と出会うタイミングもなかったので、「自分でやっていくしかない」と腹を括って始めましたね。
移住して、益子陶器市に出店する機会もいきなり巡ってきて、テントを出させてもらったり。たまたま知人から出店の話がきて、本当に運が良かったと思います。

そんな益子の環境も魅力ですよね。移住してから作風は変わりましたか?
そうですね。移住した後、工房の準備などで半年くらい陶芸ができない時期がありました。夜はやることがなくて暇だったので、釉薬の本を買ってテストピースをつくったりして。それまでは絵を描いたり、掻き落としをしたりしていたんですが、そこから釉薬に興味が出てきましたね。
もともと釉薬にも興味はあったんですか?
そうですね。もともと抽象画も好きだったので、そういうテイストを作品に落とし込めたら面白いと思っていました。最初はうつわに絵を描き込んでいたんですが、自分のうつわに料理が盛られた写真を見る機会があって、すごく綺麗でハッとしたんです。「うつわは料理の背景になる」という面白さに気づきました。
それ以来、うつわ単体で色を表現するよりも、料理を引き立てられるような色合いを意識するようになりましたね。

色が混ざり合う、実験的な場所
その後の大きな転機は、うつわブランド「palette pottery」を立ち上げたことかと思います。改めて、ブランドを立ち上げたきっかけについて教えてください。
これまで活動をしてきて、「つくること」に追われてしまうことが課題だったんです。個人作家としての制作スピードには、どうしても限界があります。
ですが、料理人の方とコラボレーションをしたり、ただものを売るだけではない活動もしたい。そうやって新しい試みをするための自由な時間を確保するために、チームでうつわづくりをしてみたかったことが大きなきっかけですね。
自分以外のスタッフとともにうつわづくりをするケースもあるとは思うんですが…自分は部分的だとしても誰かがつくったものを自分の名前で売り出すのは違和感があったんです。そう考えると、別の名前を冠して世に出した方がいいのかなと。

中園さんのように釉薬が特徴の方の場合は、下地だけを誰かに依頼して、ご自身は釉薬をかける工程に専念することもあり得ると思います。でも、それだと「中園晋作」としての作品じゃないということで、ブランドを立ち上げられたんですね。お話を聞いていて、お客さまに対して誠実だなと思いました。
そうですね。制作の裏側は在廊していても聞かれることでもありますし、お客さまも「あの人がつくったんだな」と想像すると思うんです。そこに対して実態が異なるのは、好ましくないなと思っていて。個人作家の作品は、やっぱりそこが面白さだと思うんですよね。

そういった経緯でうつわブランド「palette pottery」が誕生したんですね。ブランド名にはどんな思いが込められているんですか?
自分はもともと絵が好きなので、デッサン、スケッチ、ドローイングなど、絵に関連する言葉を色々出していって「パレット」という名前に辿り着きました。「パレット」は、以前個展のタイトルにしたこともあって、「色が混ざって想像が生まれる場所」というイメージで名付けましたね。
「palette pottery」は立ち上げて3年ほど経つんですが、つくり方をろくろから型に変えてみたり、スタッフの体制を変えてみたりと、変化の途中なんです。ロゴもデザイナーさんに頼んでいるんですが、自分のやることが変化するのでまだ完成していなくて。でも、そういう試行錯誤も含めて、実験的な場所でもありますね。
予定調和じゃない出会いを

現在は、個人作家と「palette pottery」の活動をしていらっしゃいますが、「mor」では陶芸家 中園晋作としての作品をお届けしたいと思っています。うつわづくりの着想はどういうところから得るのでしょうか。
余裕がないとなかなか深く考えられないんですが、明確にテーマを決めてつくることはあまりないですね。「うつわ」や「花器」という形状の縛りがあるので、ゼロからイチを生み出すのではなく、実際に使われている様子を見て「次はサイズを変えてみよう」「高さを変えてみよう」と微調整を繰り返しながらものづくりをしています。
成形している時と、色(釉薬)を入れる時は完全に考えを分けていて、成形時には色のことはあまり考えていません。素焼きが終わった段階で「この形ならこの色が合うかな」と直感で決めますね。なので、同じ形のうつわが10個あったとしても、思いつきで一つひとつの色を変えたり実験したりするのが好きなんです。

偶然の産物が形になっていくんですね。中園さんとは今後、少人数制の体験会を中心に企画を重ねていきたいと考えています。体験会にいらっしゃるお客さまに向けて、ぜひ一言お願いします。
つくり手と使い手が「どんな思いで活動をしているか」「どんな気持ちでうつわを使っているか」を意見交換する場にしたいと考えています。
自分がつくるものは、自分の表現だけで完結するアート作品とは違い、使い手であるみなさんのアイデアと掛け合わさって初めて完成するものです。つくり手として想像もしなかった発見があることが、なによりも楽しみなんです。
みなさまとの関わりを長く大切にしていきたいと思っているので、気軽にお話ししに来てください。
ありがとうございます。私もどんな企画が生まれていくかとても楽しみです。最後に、今後挑戦してみたいことはありますか。
具体的に「これをやりたい」というよりは、新しく偶発的に出てくることや変化に乗れるようにしておきたいですね。今回の体験会もそうですが、一期一会の出会いに期待をしています。予期せぬ出会いや発見があった時に、その過程を面白がりながら飛び込めるようにしておきたいですね。

Profile
栃木県芳賀郡益子町を拠点に活動する陶芸家。美術系大学で陶芸と出会い、ろくろの面白さに魅せられ作家の道へ。お客さま一人ひとりと向き合い、予定調和ではない出会いから生まれる表現を追求。うつわブランド「palette pottery」もプロデュース。